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趣味

文学と本

2019/10/15

こんにちは。ブログ担当の中嶋です。

 

さて、みなさんはどんなときに本を読みますか?
勉強のため、リラックスしたい時、娯楽として?
実用書のように役立つ本でない場合、本を読む意義はなんなのでしょうか。
テレビを見たりゲームをする感覚と同じなのでしょうか。

 

私は文学部出身でもありよく本を読みます。卒業後どうして文学部にしてしまったんだろう、経営学部や経済学部の方がよほど社会で役に立ったのにと思ったことがあります。社会では理系が重宝され、「文学部に入る意味があるの?」とまで言われています。

 

そんな中、「文学部でよかった」と思わせてくれたとても印象的な言葉に出会いました。大阪大学文学部長 金水敏教授が 2017 年に卒業生に贈った式辞です。ここで一部を紹介したいと思います。

 

『文学部の学問が本領を発揮するのは、人生の岐路に立ったときではないか、と私は考えます。(中略)人生には様々な苦難が必ずやってきます。(中略)その時、文学部で学んだ事柄が、その問題に考える手がかりをきっと与えてくれます。しかも簡単な答えは与えてくれません。ただ、これらの問題を考えている間は、その問題を対象化し、客観的に捉えることができる。それは、その問題から自由でいられる、ということでもあるのです。これは、人間に与えられた究極の自由である、という言い方もできるでしょう。人間が人間として自由であるためには、直面した問題について考え抜くしかない。その考える手がかりを与えてくれるのが、文学部で学ぶさまざまな学問であったというわけです。』

 

文学部で学ぶ学問に限らず、日常で本を読むことにも大いに当てはまると思います。
たとえその本が実用書や自己啓発本でないとしても、本を読むことで自分が生きる以外の世界を知り、体験することができます。日々の些細な選択または重大な岐路に立ったときに、その体験で得たことをヒントに自らの力で新たな選択肢を生み出せるようになるはずです。

 

『文学部の学問は日持ちがする、一生分、あるいはそれより遙かに長い時間効き目が続く、賞味期限が続くということは保証いたします。』

 

金水教授は式辞の中でこのようにも言っています。本を読むことは単なる娯楽や休息以上にその人の人生に密接に関係していくのです。

 

さて、本が読みたくなってきましたか?
そうであれば嬉しいです。少しだけ私の好きな本を紹介したいと思います。

 

・70〜80 年代のアメリカ文学を代表する詩人・短篇小説家です。
・カーヴァーの描くストーリーはなんでもない日常の一コマを切り取ったようなもので文体も簡素な表現のため、初めて読むときには少し拍子抜けするような感覚があります。
・そんななんでもない日常もカーヴァーによって非日常的な躍動を持ち登場人物の心の奥底の機微を感じとれる不思議な魅力を持ちます。
・彼の作品は初期の作品から読み進めるのがおすすめですが、「大聖堂」は比較的拍子抜け感が少なく、素敵な作品が詰まってますので本を読む楽しさを感じるのにはぴったりです。

 

・アメリカ文学界の巨匠で主に南北戦争後の影響が残る南部に属する人々を書いた小説家です。
・この作品は自分に黒人の血が流れているかもしれないと葛藤する若者、世捨て人となった元牧師、純粋さを失わない若い妊婦などの人物が織りなす長編小説です。
・アメリカ文学はその歴史から汲み取れるように、家(Home)を持たず、周囲に背を向けて孤独の中生きる人々が描かれることが多いと言われています。そこが他の国の文学との1番の違いでしょうか。この作品はまさにそんなアメリカ文学の魅力が色濃く描かれた作品です。

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